最後の恋

12+α.受容<side A>

いつからか、ほとんど感情を表に出すことのなくなっていた乱馬が。
『彼女』であるあたしに、ひたすら優しく接してきた乱馬が。

今、信じられないほどの荒々しさで、あたしを蹂躙している。


最初は、どうしてこうなったのかわからなかった。
ただ、乱馬が怖くて。

何も映してないその瞳が。
明らかな怒気を含んだその声が。
あたしのことを全く気遣わないその行為が。

されたことのない暴虐に困惑し涙が出た。
反射的に身体は抵抗した。
そして、乱馬に本気で押さえつけられては何も出来ないのだと、すぐに理解した。


あたしはこの凶行の中で、ただ嵐が過ぎるのを待っている。
はずだった。

でもふと、あることに気が付いた。


ああ。
いつからか乱馬に感じるようになっていた、違和感。

これだったんだ。


あたしの醜い感情から来るものだと思ったりもしたけど、違っていた。



“乱馬が、あたしに気を遣っていた”



これが、不自然さの正体。

優しくなったんじゃない。
あたしがそうさせてしまっていた。

あたしは、表面的なものしか見ていなかったんだ。

乱馬はずっと、感情を爆発させるのを抑えてきた。
こんなに、目の前のあたしさえ見えなくなるほど。

泣きそうな顔をして、暴挙に出るほど。


ごめん。

ごめんね、乱馬。


苦しさに気付かなくて。
感情を抑えさせて。



ごめん────。



あたしは、そっと乱馬の背中に腕を回した。
乱馬が一瞬ビクッとしたのがわかった。

受けとめたかった。
苦しみの全てを。悲しみの全てを。


「な、んで・・・・・・」


乱馬の声が、震えていた。
汗ではない透明な雫が、頬に落ちてきた。


ここまで追い詰めてしまって、許してなんて言えないけど。

それでもこれだけは伝わってほしい。


貴方が、好き────。


   “『記憶の中で ずっと二人は 生きて行ける』”
     君の声が 今も胸に響くよ”


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