分かっていたのに虜だった。
*Caution!*
この話は乱あが前提ですが、シャンプー目線です。
おまけにいろいろとおかしいです。
苦手だと思われたら即回避して下さい。
「あの・・・さ、俺・・・」
やめて。ヤメテ。言わないで。
「あかねと・・・その・・・」
真っ赤な顔をして何かを言おうとする彼が、今何を考えているのか。
当ててあげましょうか。
抱いているときの彼女を思い出したんでしょう?
自分を見上げる潤んだ瞳。滑らかな肌。甘い鳴き声。
それらを反芻して、余韻に浸ってるんでしょう?
そんな惚けた顔で、周りにバレないとでも思っているんだろうか、この人は。
他の女の目の前で。しかも、よりによって貴方を好きだと公言している女の。
最低。最低。最低。
でも、ずっと好きだった。
彼が彼女以外を見ていないことは知っていた。
日本で初めて会ったあの日から。
でも人の気持ちなんて脆くて儚いもので、彼の初恋もすぐに終わる。
そして、私と愛を知る。
はずだった。
幾度も幾度も、彼の彼女への想いを見せつけられても。
彼女の厄介なところは、本人が側にいるときよりも、いないときの方がむしろ感じさせる存在感にあった。
何週間も会わない日が続いても、彼女の存在は彼の中でむしろ膨れ上がるばかりで。
殺してやろうかとも思った。
最初は、本気でそうしようと思っていた。
でも、出来なくなった。
故郷の掟は絶対であるはずなのに、私は最早それを実行する気がない。
それは、彼女の人柄に触れてしまったからなのか。
馴れ合いすぎて、情が移ってしまったのか。
彼女に負けているところなんて一つもないけれど。
彼女を好きだなんてとても思えないけれど。
ああ、でも。やっぱりこの状況は最低。
私が何を考えているかなんて、これっぽっちも興味がない彼は、自分の言いたいことを口に出すのに一生懸命で。
その鋭さで彼を貫いてしまえそうなほどの私の冷たい視線にも全く気が付かない。
「あかねと・・・けっ結婚しようと思うんだ」
『あかねと付き合う』
そう言うと思っていたから、ショックよりも驚きが勝ってしまった。
目を見開いた私に、彼は続ける。
「やっ・・・あかねはまだ知らねーんだけど・・・俺がそう決めたっていうか・・・」
は? そんなことどうでもいいし。
ってかそういう関係になったら即結婚?
責任をとるつもりにでもなっているのだろうか、この男は。
それならば。
私も既成事実を作ってしまえばいいではないか。
この男は人でなしではない、いやむしろ義理堅いから、私とそういう関係になればそれをなかったことには出来ないだろう。
夕暮れの誰もいない空き地で、私は彼に襲いかかる。
油断していた彼は、あっさりと押し倒された。
彼に馬乗りになって、チャイナドレスを胸の上まで一気にまくり上げた。
「俺さ」
服越しとはいえ、彼のモノの上に跨っているというのに、彼は全く動じない。
今までの彼だったら、慌てふためいて「おっ、下りろよっ!」とか言いながら顔を真っ赤にして私を引き剥がしていたのに。
好きな女を手に入れた事実というのはこんなにも人を変えるものなのか。
いっそ余裕ともとれる表情で、彼は真正面からさらりと言ってのけた。
「好きな子じゃねーと勃たないみたい」
この一言で完全に興をそがれた私は、彼から離れて服を戻すと、その場から飛び去った。
「おい!」
彼の叫びなど聞こえない。
どうせこの後彼は『言いたいことは言えた』とばかりに、誇らしげな顔で彼女の元へと帰るのだから。
そして「お前だけだ」と甘い睦言を囁きながら、今夜も彼女に夢中になるのだろう。
『好きな子じゃないと』?
正気だろうか。何を言っているのか。そんなはずがないではないか。
しかしあの、彼女以外の女は女に見えていないような様子では、それも有り得る気がした。
しまった。確かめれば良かった。
そうすればあの馬鹿な男の世迷い言が本当かどうか分かったのに。
もう今更また自分を安売りするような真似はしたくない。
すでに高く積み上げてきた自尊心は粉々だというのに。
このモヤモヤをどうしたらよいのだろう。
そうだ、瓶底眼鏡の幼馴染に八つ当たりでもしよう。
あの男は、きっと私が何をしても受け入れるから。
逃げでしかないと、代わりでしかないと分かっていても、突き放すはずがない。
私は自分の家へ、いや、何故か今思い出した男のところへ帰ろうと屋根を駆けていった。
2014.03.10
全く別の爽やかなものを書いていたはずが、突然思いついて先に書き上げてしまったコレ。
なんでしょうね・・・私は乱馬大好きなはずなのに、あまりにも長く愛しすぎるとおかしな方向へ行ってしまうのか。よくもまあこんな阿呆な男に仕上げられたものです。しかし私の中では、彼はあかねさえ見ていればそれでよし。
モノローグなので、本当はシャンプーは中国語でまくし立てているはずです。
ゆえにあの可愛いエセ日本語ではありません。