愛し君へ

「彼女さんへのプレゼントですか? 喜ばれますよー? 本当羨ましいです!」

ああもうそんなことはいいから早くしてくれ・・・。
さっきから、周りの視線がイタイ。
あいつ何恥ずかしいことしてんだ?って目。

小さな花屋にいる全員が俺のことを見ている、そんな気がしてならない。

大体、花束一つ作るのにこんなに時間が掛かるなんて思ってなかった。
サッと注文して、パッと貰って帰るつもりだったのに。

以前にも一度、なびきへの復讐のために毒々しい真っ赤なバラを買った覚えがあるけど、あんときゃ復讐に燃えてて買うのが恥ずかしいなんて全く思わなかったからなー。

けど、これは好きな奴に渡すんだから。
意識しまくり、照れまくり。
とにかく一刻も早くこの場から逃げ出したい。

「さ、出来ました! おっしゃってた色のイメージでまとめましたがいかがですか? ちなみに数を限定されたのってもしかして、お相手の歳の数だけ・・・とかだったりします?」
「・・・・・・!! そそそうです・・・」

そこまで読まれるなんて、しかも口に出されるなんて、俺めちゃくちゃ恥ずかしい奴じゃねーかー!!
・・・と満面の笑みで出来上がった花束を差し出す店員にツッコむことも出来ず、俺はそそくさとそれを受け取って花屋を後にした。


今日は、あいつの誕生日。

今までロクなもんあげたことなかったから、今年こそは、と一応バイトして金を貯めてみた。

こんな恥ずかしい物まで買ったのには、理由があって。

本当に渡したいものはもう一つあるんだけど、それだけを上手く渡す自信がなかったから、こん中に入れて無造作に渡すことにした。

後で気付いてくれればいい。
そんで、次に顔を合わせた時にちゃんと指にはめてくれてたら、それが返事だと思うから。

「誕生日、おめでとう」


2007.07.04
杜崎淑乃さまにお誕生日プレゼントとしてお贈りしたものです。

よちしゃんにとてもタイミング良くバトンを回して、素敵に答えて頂いたことから生まれた夢小説。
彼女が答えた“誕生日バトン”を見てどうしても書かずにはいられなかった。
私的には珍しく本当にSS。
花も指輪も“自分”のイメージで想像して頂けたら幸いです。